【先進国の後見制度①~オーストラリア編】
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【先進国の「後見制度」はどうなっているの?】
世界的な高齢化に伴い、先進諸国では「後見制度」の見直しが2005年頃から始まっています。
その見直しの「核」となっている考え方は、「自己決定権の尊重」にあります。
このことを実現するには、判断能力があるうちに将来について準備できる「任意後見」の利用が最も適していますが、どうやら先進国は、この「任意後見」を促進する方向に舵を切ったと言うことができます。

今回は、6回シリーズで、オーストラリア、ドイツ、イタリア、イギリス、アメリカ、フランスの「後見制度」についてレポートします。
第1回目は、オーストラリアです。

【オーストラリアの人口・高齢者数】
オーストラリアの人口は約2340万人で、65歳以上の高齢者は約340万人となっています。(2013年10月現在)
オーストラリアも日本同様、高齢者は増加傾向にあります。

【オーストラリアの成年後見制度】
オーストラリアでは、50歳を過ぎたら、
①遺言
②代理人
③後見人
④アドバンス・ディレクティブ(事前指示書)を用意することが推奨されています。

①の遺言は、相続争いなどを防ぐために、死後の財産配分を明示しておくもの。

②の代理人は、意思表示・判断能力を喪失してしまったときに、本人に代わって財産管理を支援してもらうためのもの。

③の後見人は、生活の支援をするもので、どこに住みたいか、どのような援助(ケアプラン)を受けたいか、医療行為の決定などをするもの。

④のアドバンス・ディレクティブ(事前指示書)は、リビングウィル(尊厳死の宣誓書)とほぼ同じ意味に用いられることが多いのですが、終末期だけに限定せず、より長い期間の広い範囲の医療に対する希望を指しているそうです。
また、判断能力を失った場合には、自分の望む治療を受けるために、誰に後見人になってもらうかの指示が含まれることもあるようです。

オーストラリアでは、病院、ナーシングホームへの入院(入所)時、後見人と事前指示書を指定・用意することが通常の手続き方法となっています。

日本では、認知症になるなど判断能力が不十分になった後に、法定後見制度を利用することが多いですが、オーストラリアは「判断能力が十分あるうちに、自分自身の将来について決めておく」という姿勢が、自己決定権を尊重するという意味で素晴らしいと思います。

ところで、オーストラリアの取り組みは、日本の超高齢化を下敷きにしてすすめられていると側聞します。
超高齢化の本家である日本は、オーストラリア以上に考えなくてはならないかもしれません。

次回(第2回目)は、ドイツの成年後見を取り上げてみたいと思います。

(資料提供)一般社団法人 任意後見サポートクラブⓇ
(調査・執筆)一般社団法人 任意後見サポートクラブⓇ
理事・事務局長 秋元美香利
(監修)内閣府認証NPO法人 日本スマートライフ協会Ⓡ

【先進国の後見制度②~ドイツ編】
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今回は「ドイツの成年後見制度」をお届けします。

【ドイツの人口・高齢者数】
ドイツの人口は、約8,300万人で65歳以上の高齢者数は全体の21.2%、約1,760万人と言われております。(2015年現在)
ドイツも高齢者数は、増加傾向にあります。

【ドイツの成年後見制度】
ドイツの成年後見は、「世話法」と呼ばれています。(日本の法定後見制度に近い制度です。)
1990年9月に制定され、1992年1月1日に施行されました。

世話法は、意思能力の不十分な人のための後見人と 視聴覚障がい者等のための障がい監護者制度を統一し、新しい世話人制度を創設しました。
世話法の世話制度の基本理念は「自己決定権の尊重」と「残存能力の活用」にあると言います。本人の意思と能力を最大限に重んじて、国家及び第三者(世話人)による干渉を最小限に抑えようとしています。

2013年現在、日本では人口約1億2600万人に対し成年後見利用者が約16万人であるのに対し、ドイツでは人口約8200万人に対し世話人利用者が約120万人と約8倍となっています。
また、120万人の利用者に対し、世話人(日本の法定後見人に近いです。)の数は、およそ25万人と言われています。
世話人は、3分の1が職業世話人で、残りが親族や市民後見人からなる名誉世話人となっています。

通常、職業世話人に対する費用は本人が負担しますが、中にはこれを支払えない人もいます。その場合は政府が肩代わりしていましたが、高齢化とともに世話法利用者が増加し、政府の支出も増えていったことが問題となっていました。

この支出を抑えるため、2005年、世話法が改正されました。その中で、日本の「任意後見制度」にあたる、「任意代理契約制度」が導入されました。
現在では、この「任意代理契約制度」が主流です。

なぜならば、「任意代理契約制度」では、後見業務に対する報酬を当事者同志が話し合いで決めるため、国庫から当たり前のように支出されていた費用を抑制できるためです。
政府としては、「このまま国が費用を負担していたのでは、財政がもたない」という本音があったようです。

日本にもドイツの「任意代理契約制度」同様「任意後見」があるわけですから、ドイツの取り組みに習って「任意後見」を理解し、利用に結び付けていくことが大切だと思います。

次回はイタリアです。

(参考資料)
ドイツにおける介護システム等について(在ドイツ大使館)

(調査・執筆)
一般社団法人 任意後見サポートクラブⓇ 理事・事務局長 秋元美香利

(監修)内閣府認証NPO法人 日本スマートライフ協会Ⓡ

【先進国の後見制度③~イタリア編】
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第3回は、イタリアの成年後見制度について以下にまとめてみました。

【イタリアの人口・高齢者数】
イタリアの総人口は約6,100万人で高齢者数は全体の約22%、1,342万人となります。イタリアの高齢者数は、主要国の中で日本に次いで世界で2番目の高さです。
今後も高齢者数は増加するとの推計が出ています。

【イタリアの成年後見制度】
従来、イタリアでは日本の「法定後見制度」にあたる「禁治産制度(心神喪失にある人について裁判所が禁治産者と宣告して後見人をつけること)」という制度しかありませんでしたが、2004年に法改正されて「管理支援制度」という制度ができました。
「管理支援制度」とは、今までのように心神喪失にある弱者に代わって意思決定するのではなく、本人の意思を尊重して決めていくことができる制度のことです。

管理支援者は、日常生活の中で、自立性の一部又は全てを失っている人の日常的な世話(支援)をします。
例えば、「高齢者がスーパーの買い物の際にお金を数えられない」「郵便局に行ったとき、どの書類に書いたらいいのか分からない」等の支援や、「手術を受けるかどうか」等の医療支援なども範疇に入っています。

「禁治産制度」しかなかったときには、制度を利用すると、本人の決定権がすべて失われてしまう状態でしたが、「管理支援制度」の場合には、管理支援者が就任しても本人の決定権は失われず、かえって得るものが大きくなります。

「管理支援制度」の目的は、弱者層に属する人たちが安心して日常生活を送ることなので、支援の対象は、本人が支援を必要としている部分のみです。
その人の支援をすることが目的ですから、決してその人の権利を奪ってはいけないことになっています。
また、「管理支援制度」の利用料は基本的に無償で、費用がかかるとすれば、多少の実費経費の支払いのみで利用することができます。
通常は、家族が管理支援者となることが多いのですが、弁護士がなる場合は、10年ごとのローテーションとなっています。

一方、日本では、認知症などで判断能力が不十分になったら、「法定後見制度」を利用します。この制度では、家庭裁判所が、後見人の選任と後見人に支払う報酬を決めて制度が開始されます。
また、後見人は、弁護士や司法書士などの法律の専門家が選任されるケースが多く、家族の方が任命されることはあまりないようです。
選任された後見人は、本人の財産を本人のためだけに使うことになっています。
そして年1回、後見人が本人の財産をきちんと管理しているか(不正を働いていないか)どうかを監督人がチェックします。
この後見人は、よほどのことがない限り、本人の後見が終了する(本人が死亡する)まで後見人として仕事をします。

しかし、この「法定後見制度」では、イタリアの「管理支援制度」のように、「本人の意思」が尊重されることはありません。
もし、あなたが「管理支援制度」に似た制度を利用したいのであれば、「任意後見制度」を利用する方法があります。
「任意後見制度」は、判断能力があるうちに、認知症などで判断能力が不十分になったときに備えて、信頼できる任意後見人にあなた自身の支援をお願いしておく制度です。
この制度は、あなたの判断能力が不十分になってから開始されます。
また、「法定後見制度」と違って、報酬も有償無償を選択できる(話し合いにより決定する)のが特徴です。

現在、イタリアでは「禁治産制度」が使われるケースは非常に少なく、ほとんど「管理支援制度」の利用に切り替わってきていると言います。
これを機会に、「任意後見制度」を理解して、「もしもの時」に備えてみてはいかがでしょうか。

次回は、イギリスです。

(参考資料)日弁連
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/organization/data/57th_keynote_report2_21.pdf

(調査・執筆)
一般社団法人 任意後見サポートクラブⓇ理事・事務局長 秋元美香利

(監修)内閣府認証NPO法人 日本スマートライフ協会Ⓡ
【先進国の後見制度④~イギリス編】
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第4回はイギリスの成年後見制度について以下にまとめてみました。

【イギリスの人口・高齢者数】
イギリスの人口は約6,452万人、高齢者率は人口の17,8%で約1,150万人です。
イギリスも高齢者数は増加の傾向となっています。

【イギリスのMCA】
イギリスでは、判断能力の不十分な人々に対し、国家によって管理を行うという形の後見がかなり長く続きましたが、2005年「意思決定能力法(以下MCA)」が制定されました。このMCAは、日本の「法定後見」と「任意後見」を足して2で割ったような制度です。

イギリスのMCAと日本の法定後見の大きな違いについてですが、イギリスのMCAは、意思決定支援を優先する原則と、意思決定能力がないと判断されてもご本人にとって最善の利益(ベスト・インタレスト)を追求していく原則が明確に示されていますが、日本の法定後見は、判断能力が不十分になってから利用するので、ご本人の意思を尊重することは難しいと言わざるをえません。
近年、日本もイギリスのMCAや諸外国の「意思決定支援システム」に関心を持っていますが、現行の制度では本人の意思決定をどのように支援するかに関する具体的な仕組み作りは、まだまだ過渡期にあるようです。

MCAの中心的な考え方は「本人中心主義」で、これは「すべての人が自分で決定し、自分の人生を決める権利を持っている」という考え方だそうです。
そのため、支援者は常に自問自答しながら意思決定支援に臨まないといけないようです。また、大事なのは、「どうして意思疎通に問題を抱えているか?」を考えながら、コミュニケーションをとることであり、意思決定支援のベースには本人と支援者の信頼関係が必要不可欠とのことです。

そして、意思決定能力がないと判断された場合、日本はすぐに「法定後見」に結びつけられることが多いですが、イギリスのMCAは、本人に代わって意思決定をする者(周囲の介護者(親族を含む)、医療関係者、任意後見人、法定後見人等)が、その人の最善の利益(ベスト・インタレスト)とは何かを見極めながら意思決定を代行していくそうです。

【イギリスの法定後見制度】
MCAでは、意思決定能力のない人に対し、保護裁判所が継続的な代理・代行の権限をもって本人を支援することが必要だと判断した場合は、法定後見人を選任できます。法定後見人は2014年時点で、53,100名(家族又は友人が22,043件、地方自治体に登録しているソーシャルワーカー17,643件、弁護士(ソリシター*1)等10,414件)が選任されて活動しています。

ご本人に財産があるケースでは、弁護士(ソリシター)や家族が法定後見人に就任することが多く、財産がないケースでは地方自治体が就任することが多いそうです。(実務を行うのは同自治体のソーシャルワーカー。)
報酬は、ソーシャルワーカーが就任した場合、初年度で約21万円(1ポンド180円で換算。以下同じ。)、他方ソリシターに依頼すると初年度で約90万円が必要だそうです。財産のある人とない人とでは、支払う報酬にかなり差があることが分かります。ちなみに、2年目以降は初年度よりは報酬は低くなるようです。

財産のないケースでは前述したように地方自治体が法定後見人を務めることが多いですが、地方自治体が受けられる人数には予算の都合上限りがあるので、地方自治体から受けられない場合には、後見庁が任命する「委員後見人*2」という制度を利用するそうです。

また、年金や生活保護しか収入がない人で、財産管理が難しい場合は、法定後見人ではなく、労働年金省が任命する社会保障費受取人がご本人の年金等を受領し、財産管理を行う場合もあるそうです。

ご本人の経済状況に応じ臨機応変に対応しているところは素晴らしいですね。
最後に「任意後見」についてまとめました。

【イギリスの任意後見制度】
イギリスでは、日本よりも圧倒的に活用されているのが任意後見(以下LPA)です。任意後見人は2014年時点で、累計で約100万人が登録しているそうです。

日本では任意後見を行う場合、公証役場で公正証書にしますが、イギリスのLPAは後見庁に登録すれば、通常、財産管理に関してはそのまま効力が発生するそうです。
最近、政府のウェブサイトで「Choice not Chance」(運任せではなく、自ら選択しよう)というLPAを推進するキャンペーンを行い、「LPAだと法定後見より安い」と推進したところ、40万件の登録があったそうです。また、手続きの簡略化のため、LPA申請書はウェブサイトで作成し、それをダウンロードできるようにもしたそうです。

日本の成年後見制度は分かりにくく、一般の人の中には士業などの専門家しかできないと思っている方も多いのが現状です。
もちろん、簡単に手続きできて誰でもなることができるというのも制度を濫用されるおそれがありますが、ますます超高齢化社会となるわが国では成年後見制度の新機軸である「任意後見制度」は判断能力が不十分になったときに、自分の生活を守る唯一の法制度なのですから、インターネット等を利用して、「任意後見」を理解し、利用を検討することが望まれます。

次回はアメリカの成年後見制度です。

(*1)ソリシターとは、法廷での弁論以外の法律事務を取り扱う法律専門職のことを言います。
(*2)委員後見人とは、無償で法定後見人に就任することを承諾した専門職(ほとんどがソシリター)で、後見庁が任命します。

(参考資料)
(日弁連)
(調査・執筆)一般社団法人 任意後見サポートクラブⓇ理事・事務局長 秋元美香利
(監修)内閣府認証NPO法人 日本スマートライフ協会Ⓡ

【先進国の後見制度⑤~アメリカ編】

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今回は、「アメリカの成年後見制度」についてまとめてみました。

【アメリカの人口・高齢者数】
アメリカの人口は約3億3千万人で、高齢者数は全体の14.8%、約4,890万人です。(2015年現在)
アメリカも高齢者数は今後増加するとの推計が出ています。

【アメリカの成年後見制度】
アメリカには、従来からの伝統的な後見制度(guardianship)がありますが、この伝統的な制度には様々な問題があり、必ずしも利用しやすい制度ではなかったようです。
高齢で判断能力が不十分な方の身上及び財産を保護するために従来からなされている方法は、裁判所が代理意思決定者(以下後見人)を任命します。後見人は、判断能力が不十分な方(以下被後見人)の利益のために、被後見人に代わりに決定を行ないます。

後見制度は一般に三種類あります。
「財産管理のための後見」と「身上監護*1のための後見」と「財産管理、身上監護の両方を兼ね備えた後見」です。
なぜ三種類の後見があるのかというと、障がい者の能力に応じて、財産又は身上監護のどちらかについて後見は必要だが、両方の後見は必要ないということがしばしばあるからです。
裁判所は、一般的には、財産管理の後見は銀行又は弁護士に、身上監護の後見は家族の者にというように、それぞれの職務に適した人を任命します。
裁判所から任命を受けた後見人は、被後見人の代理人として行為を行う義務及び権限と、その行動について裁判所に報告する義務及び権限を有しています。
また、後見人の職務範囲は、後見人の権限を定めた制定法の定義によって定められます。

従来は、被後見人の身上又は財産に関して完全な決定権を持った後見人しか認められていませんでしたが、最近では後見人の権限を、日常生活における法律行為など被後見人が意思決定能力を持たない部分に制限しています。
このような限定的な身上又は財産管理に関する後見人の概念を認める州法が増えてきているそうです。

しかし、このような後見制度にも、
・後見人の任命が機械的で報告が不十分、又は欠如している
・手続きの遅滞
・裁判所のような公の場所で、個人的なことを暴露しなければならない
・費用がかかる
・後見人の権限の濫用、被後見人に対する無視や搾取
などの問題点が指摘されています。

このような問題を回避するため、アメリカでは様々な代替方法が検討され、その中に、「持続的代理権」という制度があります。

【持続的代理権とは】
「持続的代理権」とは、本人の判断能力が不十分になった場合、その本人を管理するための裁判外の制度です。
「持続的権限」の一般的な使用は、本人が自分の財産を管理できない場合の包括的な財産計画の方策であり、本人の利益や本人の要求のために財産を他人が管理し、コントロールすることです。
また、「持続的権限」は本人の財産管理と身上監護の両方に適用されます。

この「持続的代理権」も、より良い制度にするため何度か改正されました。
代理人と本人の関係で、特に大きく改正されたのは以下の二点です。

一つ目は、代理権が及ぶのは本人に判断能力のある場合に限られていましたが、「持続的代理権」を設定すると代理人は、本人の判断能力が不十分になっても代理権を行使できるようになりました。
二つ目は、従来の後見人の職務は、本人に判断能力が無くなるかまたは死亡することにより終了していましたが、現在の「持続的代理権」の場合は、本人が死亡しない限り、本人の判断能力が不十分になった場合でも本人と代理人の関係が終了しないことになりました。

【持続的代理権の内容】
「持続的代理権」の内容は、
1、権限は書面で示されていなければならない。
2、本人が権限を記したときには、判断能力があると考えられる。
3、本人に障がいがあっても、権限が行使され得ることを本人が示すことが要求されています。

内容を見ていると、日本の「任意後見制度」に似ていませんか。
1の「権限を書面にする」は、日本で言うと、任意後見の「代理権目録」に似ています。
2の文言は、日本の場合、「任意後見制度」を利用できる人は、判断能力がある人です。
3の文言は、日本の場合、「任意後見制度」は判断能力があるうちに、自分が認知症などで判断能力を失ったときに備えてお願いしたいことを信頼できる人(任意後見人)に支援してもらう制度となります。

このようにアメリカでは、「成年後見制度」については課題があるため、最近では「持続的代理権」がスタンダードになってきているようです。
そして、この「持続的代理権」は、他の先進国と同様に、「自己決定権の尊重」を大切にしている制度だと言うことができると思います。

次回は、フランスの成年後見です。

(*1)身上監護とは、後見人が被後見人の医療・介護など生活全般に関する手続や契約を行なうことを言います。

(参考資料)アメリカの成年後見制度

(調査・執筆)一般社団法人 任意後見サポートクラブⓇ 理事・事務局長 秋元美香利

(監修)内閣府認証NPO法人 日本スマートライフ協会Ⓡ

【先進国の後見制度⑥~フランス編】

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今回はフランスの後見制度についてまとめました。

【フランスの人口・高齢者数】
フランスの人口は約6,632万人で、高齢者率は全体の18,4%の約1,219万人となっています。(2015年現在)
フランスも高齢者数は増加の推計が出ています。

【フランスの成年後見制度】
フランスの成年後見制度には、「司法的救済」「保佐」「後見」と3つの類型があります。
「司法的救済」とは、当面の緊急的な後見の必要に対応し経過的な措置を取るために「裁判所による保護」を行うことです。
「保佐」とは、ある程度残存能力があるときには、残された能力を活かしながら、重要な一定の行為を支援するために「保佐人」を選任することです。
「後見」とは、判断能力がほとんどなく全面的な保護を必要とするとき「後見人」を選任することです。

しかし近年、フランスでも、高齢化が進んだことや、EU社会への対応、ヨーロッパの主要国が「成年後見制度」を改正した影響により、2007年に成年後見法の大改正がありました。
フランス政府が「後見人は財産の管理だけでなく、判断能力が不十分な方の身上の管理も行わなければならない」ことを認めた ことも大改正のきっかけとなったようです。

これにより、成年後見制度の基本的な原則として、「身上保護」が加わりました。
「身上保護」とは、『成年者は、本章に定める方式に従い、その身分又は状況が必要とするその身上及び財産の保護を受ける』ことと書いてあります。
ここで言う「保護」とは、『個人の自由、基本権及び人の尊厳の尊重の中で確立され、保障されること』であり、『最終的には、被保護者(制度利用者)の利益となる。それは、可能な限り、被保護者(制度利用者)の自律を促進すること』とされています。
そして最後に、『この保護は、家族及び公共団体の責務である』と規定されています。

【フランスの将来保護委任制度】
また、この2007年の民法改正によって、日本の「任意後見制度」にあたる「将来保護委任制度」も法制化されました。

「将来保護委任制度」とは、ある人が、精神的または身体的能力の衰えによって、将来、自分ではできなくなるであろう日に備えて、第三者に財産管理や、身上監護を依頼する委任制度で、このような委任制度は、「自己決定権尊重の精神」から生じたものです。これにより、自分自身で前もって、後々に必要となりうる保護について準備しておくことができるようになしました。

このように、近年、先進国で「成年後見制度」の改革が行われ、その特徴のひとつとして、「任意後見(持続的代理権)制度」への継受(引き継ぎ)があります。

フランス以外のEU諸国でも、1999年の「判断能力が不十分な成年者の法的保護に関する基本原則」および2009年の「法的無能力に備えた持続的代理権」と「事前指示書に関する基本原則」という2つのEU評議会閣僚委員会勧告における、「判断能力の喪失・減退に備えて事前意思決定制度の充実」という政策目的に沿う形で、次々と「任意後見制度」の整備が進められてきています。

日本でも、2000年4月に任意後見契約に関する法律によって、自己決定権を尊重する任意後見制度がスタートしました。
ところが、この「任意後見制度」、日本ではまだまだ利用者が少なく、制度自体を知らない方もたくさんいるのが現状です。しかしながら、世界一の長寿国である我が国こそ「任意後見制度」を活用して、将来の生活や財産の使い道に自分の意思を反映し、ご自身の望む老後を過ごせるようにしていただきたいと思います。

「先進国の後見制度シリーズ」は今回でいったん終了しますが、最新情報が入り次第、引き続き皆さまに情報提供して参りたいと思います。

(参考資料)「成年後見法における身上保護についてーフランスの法制度」

「2011年度 厚生労働省 障害者総合福祉推進事業」

「フランス社会の変容と民法典改正」

(調査・執筆)一般社団法人 任意後見サポートクラブⓇ 理事・事務局長 秋元美香利

(監修)内閣府認証NPO法人 日本スマートライフ協会Ⓡ

【先進国の後見制度⑦~スウェーデン編】

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今回は「高福祉国家」と言われている、スウェーデンの後見制度についてまとめました。

【スウェーデンの人口・高齢者数】

スウェーデンの人口はおよそ988万人で、65歳以上の高齢者数は約191万人(全体の19.7%)です。(2015年現在)

高齢者数は、今後も増加するとの推計が出ています。

【スェーデンの成年後見制度】
スウェーデンの「成年後見制度」は、1667年に創設されました。その後、時代に合わせて幾度かの改正が行なわれ、1989年以降、「成年者であっても、法的無能力者と宣告すること」は廃止され、すべての人が18歳以上は例外なく平等の法的地位を獲得できることになりました。

ただし、18歳以上もなんらかの理由で、権利擁護のために後見人を必要とするときはこれを認め、後見人の援助を付与して平等な法的地位を獲得できるようにしました。

現在の制度は、「特別代理人(グードマン)」と「管理後見人(フォールバルタル)」という2つの類型からなっています。
「特別代理人」は日本の法定後見でいうところの「補助」に該当し、
「管理後見人」は「保佐・後見」に該当します。

この2つの違いは、「特別代理人」よりも「管理後見人」の方が、当事者に対して干渉の度合いが高く、職務の範囲も広くなることです。
「特別代理人」を利用する人よりも、「管理後見人」を利用する人の方が判断能力が不十分なため、「管理後見人」の介入が必要だからです。

それぞれの仕事についてまとめました。

【特別代理人】
「疾病、精神遅滞、健康状態の衰弱等のため、権利の監視、財産の管理または、身上看護を必要とする者がある時は、裁判所は必要に応じて、当事者のために「特別代理人」を任命することができる」と定められています。

「特別代理人」の役割は、
①権利の監視
②財産の管理
③身上監護
の3点にまたがっており、1点または2点の領域を特定しない限り、3点のすべてを包括します。
役割を限定することも可能ですが、その場合は、裁判所の決定が必要となります。

【管理後見人】
「疾病、精神遅滞、健康状態の衰弱等のため、権利の監視、財産の管理または、身上看護を必要とする者が、自らをケアしたり、自らの財産を管理できる状態にない場合、当事者のために裁判所は「管理後見人」を任命する決定を下すことができる」と定められています。

但し、「特別代理人」を任命すれば十分な場合や、当事者が他の方法で援助を得ることができる場合には、「管理後見人」を任命することはできないと定められています。

なぜなら、「特別代理人」を利用する人は、「管理後見人」を利用する人よりも
判断能力があるため、「管理後見人」を利用してしまうと、自己決定権が尊重されなくなってしまう恐れがあるからです。

「管理後見人」は、「特別代理人」とは違って、当事者の同意なしに、法律行為が可能であったり、当事者の生計に自由に介入することができます。

しかしながら、「管理後見人」は、役割を限定することもできます。
なぜならば、障がいを持った方が、自己の生活に関して、自己決定する権利をできるだけ保持するためです。

限定する内容は、
・特定の不動産
・一定の事案
・一定額の金銭等があります。

役割が限定された時は、「管理後見人」の管理下の範囲に関してのみ「管理後見人」が関与できることになります。これを「部分的管理後見人関与」と言います。

このようにスウェーデンでは、当事者の「権利擁護」や「自己決定権の尊重」を重視し、「残存能力の活用」をしながら成年後見制度を利用しています。

(参考資料)
障がい者のための成年後見システム


(調査・執筆)
一般社団法人 任意後見サポートクラブⓇ
理事・事務局長 秋元美香利

(監修)
内閣府認証NPO法人 日本スマートライフ協会Ⓡ