【ハロー!メッセージ】「任意後見と公正証書」

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近年、認知症リスクへの事前準備として「任意後見」が注目されています。 「任意後見」を利用するには、委任者(ご本人)と受任者(任意後見人になる人)との間で任意後見契約書を結ぶことが条件となっています。 これには、2つのルールがあります。 ひとつ目は、「契約時において、委任者と受任者双方に十分な判断能力があること」、 もうひとつは、「任意後見契約書を公証役場で公証人によって公正証書にしてもらうこと」です。 今回は、この公正証書について、現役でご活躍の慶田康男 公証人に、その役割や手順等についてご教授いただきます。

 

佐々:こんにちは。本日はご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

 

慶田:こんにちは。 今回のテーマは、任意後見契約における公正証書の役割りなので、はじめに任意後見について簡単にご説明したいと思います。 任意後見は、ご本人(高齢者等)の判断能力が十分あるうちに、将来、認知症になるなど、判断能力が不十分になったときに備えて、ご本人が、信頼できる任意後見人を決めて、何をどのように支援してもらうのかを決めておくことができる「自己決定権の尊重」を大切にした制度です。

 

佐々:「自己決定権の尊重」について、ご説明いただけますか。

 

慶田:例えば、ご本人が任意後見を利用しないで認知症になると、「法定後見」を利用することになりますが、この場合、家庭裁判所が後見人を選任(弁護士等を選んで、その任につかせること)することになります。 なぜならば、認知症になったご本人は、判断能力が不十分なので、ご本人の意思で後見人を選ぶことが出来ませんので、家庭裁判所が後見人を選定することとなっています。 つまり、ご本人の意思を活かすことは困難と言わざるをえないのが実情です。 しかし、「任意後見」は、ご本人に十分な判断能力があるうちに契約しますので、ご本人の意思(自己決定)で任意後見人に支援してもらう内容を自由に決めることができます。 このことを「自己決定権の尊重」と呼んでいます。

 

佐々:ありがとうございます。 次に、公正証書にする任意後見契約書についてご説明いただけますか。

 

慶田:任意後見契約書とは、ご本人と、ご本人が決めた信頼できる任意後見人との間で結ぶ契約書のことです。 信頼できる任意後見人に何を支援してもらうかについては、「代理権目録」で一覧にします。 例えば、お金のこと、不動産、介護・医療等についてお願いすることを自由に決めることができます。

 

佐々:信頼できる任意後見人とはどのような人のことをイメージすればよいのでしょうか。

 

慶田:例えば、ご本人の家族や親族、専門家や専門団体など、ご本人がこの人なら任せられるという信頼関係がある人や法人ということになると思います。 出来れば、ご本人よりもある程度若い行動力のある、バランス感覚を持ち合わせた人が好ましいと思います。

 

佐々:いよいよ本題の公正証書ですが、任意後見契約書を公正証書にする理由や役割りについてご教授ください。

 

慶田:公正証書は、私ども公証人が、公証人法・民法等の法律に従って作成する公文書としての契約書のことです。 公文書(国や地方公共団体、公務員が職務上作成した文書)は、証明力が高いので、仮に問題が発生して裁判になったとしても、立証(証拠を示してはっきりさせること)に苦労しません。 また、公正証書にすると、その原本は公証役場に保存されますので、紛失や偽造などへの心配がありません。 任意後見契約は、ご本人の判断能力が十分なうちに結ぶ契約とは言え、大切な約束事を決めますので、法律で公正証書にしなければ法的な効力が認められない契約のひとつとなっているわけです。

 

佐々:つまり、任意後見契約書を公正証書にするということは、「ご本人と任意後見人双方の信頼と責任を公文書にして共有する」という理解でよろしいでしょうか。

 

慶田:平たく言えば、そのようなことでよろしいかと思います。 それから、公証人は、法務大臣が任命する公務員*1です。従って、公文書である公正証書を作成することができるわけです。 *1、公務員ですが、給与はなく、依頼者からの手数料を収入としています。

 

佐々:ありがとうございます。続いて、任意後見契約書を公正証書にする手順についてご教授いただけますか。

 

慶田:結論から言えば、公証人は、条件が整っている契約書を公正証書にすることは、手慣れた作業ということができます。 この条件ですが、任意後見契約についてお話しますと、先ず前提条件があります。 ①委任者であるご本人に十分な判断能力があること。 ②受任者である任意後見人に十分な判断能力があること。 この2つがクリアーされていなければなりません。 そして、任意後見契約書には、委任者が受任者に何をお願いするのかが明確に示されていなければなりません。 先ほどもお話しましたが、これを「代理権目録」と呼び、任意後見契約書の中に含まれていますので、委任者、受任者の当事者間でよく話し合って決めていただくことになります。 それでは、「公正証書にする任意後見契約書はどのように書けばよいのか?」ということになりますが、こちらはweb上でサンプルがいろいろ出ているようですので、そちらを検索してみてはいかがでしょうか。 検索ワードは、「任意後見契約書(将来型)」です。

 

佐々:次に、気になる費用についてですが、公正証書にする予算はいか程でしょうか。

 

慶田:公証人の仕事の手数料は、公証人手数料令*2によって決められています。 今回のお話のように、ご本人が任意後見人になる人と話し合って、任意後見契約書のサンプルを参考にして契約書の下書きまで作成して事前にお示しいただくこととなりますと(これはサービス)、最終的な公正証書の作成予算は、概ね、3万円前後とお考えいただけたらと思います。 ご相談等がある場合でも、相談者作成の任意後見契約書の下書きがあると、アドバイスがしやすくなります。 また、任意後見契約公正証書作成のご相談については、最寄りの公証役場にご連絡を入れて公証人との面談を予約していただくことをおすすめします。 *2、詳しくは「日本公証人連合会」のホームページをご覧ください。 日本公証人連合会ホームページ  http://www.koshonin.gr.jp/index2.html

 

佐々:ありがとうございます。 締め括りに、インターネット世代へのメッセージをお願いします。

 

慶田:本当に驚くほど情報の入手が簡単にできる時代になりました。 おかげ様で、任意後見の知名度も徐々に上りつつあります。 しかし、任意後見について正しい理解を持つ人はまだまだ多くはないようです。 私たち公証人も啓蒙活動をして参りますが、読者のみなさんにも、任意後見の普及・推進に助力をいただき、高齢者福祉の実現を目指していただきたいと願っております。

 

2015年12月14日 ゲスト:横浜駅西口公証センター  慶田康男 公証人

聞き手:内閣府認証NPO法人 日本スマートライフ協会(R)

一般社団法人 任意後見サポートクラブ(R)  理事長 佐々 和亮